2016年に公開された日本映画です。普段の私ならなかなか観ないタイプの映画なのですが、この映画に登場したロケ地のシーンが見たいが為に、レンタルしてきました。
事前知識は映画の予告と、映画の元になった小説が話題になっていたことと、出光興産創業者の出光佐三氏をモデルにしていることぐらい。その出光興産も会社名とガソリンスタンドでお世話になってるだけなので、どんな歴史があるのかはまったく知りませんでした。
戦前~戦後の物語なので、なかなか観ていて辛いシーンもありましたが、良い映画で見ごたえがありました。2回観た程。そして2回目の方がいろいろわかっているので、より楽しめました。
感想
2回目の方がより楽しめた
主人公・国岡鐡造の20代~90代の出来事を、戦前・戦後いったりきたりしながら進むストーリーに最初はついていけなくて、「どういうことだ?」「なにがあったんだろう?」→「ああ、若い頃にそういうことがあったのか~」という感じで理解しながら観ていました。
でも1回観ただけだと、ここのつながりが十分理解できていない所もあったので、2回目に観たほうがより理解は出来ました。そして、2回目の方が安心して観ていられました。
最初、先のストーリーがわからない状態で観ていると、理不尽な目に合う鐡造を見て辛くなったり、特に日章丸事件は事件そのものを知らなかったので、攻撃されたらどうしようと恐ろしくて本当見ているのが怖かったです。(怖くて一時停止してwikipediaで事件調べたい!事件がどうなったか知った上で観たい!と思うぐらいビビってました・・・)
ユキと鐡造の関係
先妻のユキが亡くなった後、彼女の親戚の女性から別れた後も鐡造や国岡商店のことを気にかけていたことを伝えられるシーンはとても切なかったです。
私がもっと若い頃この映画を見てたら、子どもが出来なくて身を引いたユキの気持ちを理解して終わりだったけど、今だとそれ以上に一生一緒にやっていこうと思っていた相手が突然いなくなる方が辛すぎて、それなら子どもは養子を貰うことにして、2人は一緒にいることが出来なかったのか?と思ってしまいました。
これは自分や周りの友人・知人が婚活で苦労してるせいもありますね。(苦笑)一緒にいられる、家族でいられる他人との出会いの、なんと尊いものか・・・!
でも、鐡造の恩人の日田さんが言ってた様に、
夫の苦労を一緒に背負ってくれる妻が良いよ(←うろ覚え)
→これはユキはある程度出来ていた?(背負っても自分は何も出来ないから孤独を感じた?)
妻の苦労を夫はちゃんとわかってあげなきゃだめだよ(←うろ覚え)
→ユキの孤独を鐡造はちゃんとわかってなかった。鐡造「子どもが出来なくても社員が俺たちの子ども」みたいなフォローしてくれても、それでユキの悩みは解消しなかったから。
この2人の関係みたいなことって、現代でもありますよね。
夫婦共働きで大変だから家事の分担をもっとして欲しいと夫に要望したら、「仕事辞めていいよ!俺が働くから大丈夫だよ!」と言われた、みたいな話。この場合、仕事を辞めて家事だけに専念出来ればHAPPYなタイプの妻と、いやいや仕事は続けたいから家事分担もっとしてくれ!という妻と、求めてるものが人によって違ってそれによって夫婦関係が上手くいかなくなってしまう。そう考えると、ユキと鐡造はそういう意味では相性が悪かったのかな・・・。子どもが出来ていれば変わったんだろうけど。
この2人が晩年まで仲良く暮らす様子が見たかった。(´Д⊂グスン
ただラストシーンで、若い頃の国岡商店のメンバーとユキが同じ船に乗ってるシーンはその気持の慰めになりました。あのラストシーンは本当に良かった。
エンディングへの入りがとても好き
その、小舟に乗って国岡商店の仲間たちと一緒に国岡商店社歌を歌っているシーンから
タイトルが出てエンドロール・・・という流れがとても良かったです。この一連の流れだけでも、「良い映画だったな・・・」と思えてしまうぐらい。いや、良い映画だったんですけど、初めて見た時は2時間24分もあって長いし、辛いシーンや胃の痛くなるシーンも多いので「しんどいよ~」と苦しさの多い映画でもあったので、最後にそう思えたのは救いでした。良い終わり方だった・・・。
そしてエンドロールも『国岡商店社歌』から、オーケストラの演奏で静かに終わっていく感じもとても良かったです。
ここ最近見た映画の中でもダントツに好きなラストです。『国岡商店社歌』もすごく良い歌ですね。
小林薫さんの演技
国岡商店で鐡造のことを、後ろから静かに支えてる甲賀治作役の小林薫さんがとても素敵でした。ああいう人がリーダータイプの人のそばにいたら、すごく心強いだろうなぁ。
鐡造が言えないことを言ってくれて、鐡造のフォローをして他の社員のフォローもする。それも自然で説得力がある。あと、小林薫さんの声がとても素敵です。
VFXの話
最近の日本映画、特にCGなどを多用するものを全然見ていないので、この映画は2016年のものですが「最近の技術はすごいな~!」とびっくりしました。戦前・戦後の日本の風景がここまで再現出来るのですね。なんとなくCGっぽさはわかるのですが、昔に比べたらかなりリアルですね。どこまでがセットなのかわからないぐらい。
鐡造の経営者としての人生
数々の障害をなんとか乗り越えて進んでいく鐡造を見て、本当経営者は大変だと思いました。攻める所と守る所のバランスを考えるのも難しいでしょうし。特に日章丸事件の、アバダン(イラン)へ行くかどうかの決断をするシーンは、見ているこっちも逃げ出したくなってしまうぐらい。気の強い鐡造が出港したタンカーを追うように走り出すシーンから、その感情がすごく伝わってきました。
働く従業員も大変だけど、そのトップはまた違った苦労をたくさん背負ってる。背負ってくれている。
そういう経営者の苦悩も、いろんな方向から見られる作品だったと思います。
終わりに
この映画を見終わったら、モデルになった出光興産のことをもっと知りたくなりました。そして出光興産への親しみがとても湧きました。
(´-`).。oO 出光美術館にも行ってみたいな
なんて思いましたが、東京の出光美術館には行ったことありました。すっかり忘れてた。それに意識しないと、東京にある美術館の一つぐらいにしか思えてないですね。出光興産のことを知ってから行ったら、また違った感想が持てそうです。
▽『海賊とよばれた男』のロケ地の1つ、湯河原・清光園
この映画を見終わった後、日本企業所有のパナマ船籍の貨物船が座礁したニュースを見ました。
貨物船なので、この映画に登場したタンカーとは別物ですが、映画で船の帰りを祈った後に座礁して斜めになった貨物船を見るのは辛いです。船が無事帰ってこられるのは当たり前のことでは無いんですよね。
この件は、海に流れ出た真っ黒な燃料の問題もあり、とても心配です。