2011年公開のフランス映画です。
調べ物をしていたら偶然、映画『思春の森』を知り、その異常な内容と12歳が演じたということにかなり衝撃を受けました。そして、この映画に出演したエヴァ・イオネスコが自身の子供時代の出来事を監督として描いた作品がこの『ヴィオレッタ』です。
※以下、ネタバレあるので注意。
感想
この映画の感想は大きく3つありました。
- 家族間の問題の難しさ
- ヴィオレッタの魅力
- 実際はもっと酷いのだろうなという印象
家族間の問題の難しさ
ヴィオレッタがアンナ(母)に過激なポーズや衣装の写真を撮られる。元々、あまり家に帰らない母にかまってもらえたり、褒めてもらえたり、衣装や化粧で着飾る非日常な行為はヴィオレッタにとって決して悪いことでは無いのは想像出来る。
そして、それらの写真を撮られることが自分にどういう影響があるのか、子ども故にわからない。
- 曾祖母
- アンナ(母)
- ヴィオレッタ(娘)
女だけの3人家族。この中で一番強いのは、やはり母・アンナ。曾祖母は注意はするけどアンナを止めることは出来ないし、ヴィオレッタも母の要求がエスカレートしていくと拒否するようになるけど、母が自分以外のモデルをチヤホヤしたり、自分に構わなくなる事に寂しさを感じてしまう。
結果、アンナの思い通りに事が運んでしまうのが、見ていてとても歯がゆかった。誰かに介入して欲しいけど、それが出来るのは誰なのか。後半、ようやくアンナの写真が児童虐待であるとの告発があり、裁判所などの介入があるけれど、アンナは自分がした事を悪びれずヴィオレッタを手放そうとはしない。
じゃあどうすれば良かったのか?と考えると、一番はヴィオレッタの過激な写真を高く買取る人間が誰もいなければ良かった。アンナばかりが悪者では無く、アンナに
娘の過激な写真は金になるし、名声も与えてくれる
ということを周りにいた人間が学ばせてしまったことが、一番の不幸だったと思う。そうすると、アンナは売れない写真家のままで、また違った不幸があの家に生じてしまうかもしれないけれど。
家族の間だけで問題が解決出来ないばかりか、周りにいた人間によって、さらに火に油が注がれてしまった。この火を消すのは容易では無い。
アンナが普通の人々を凡人と見下して関わろうとしなかったのも、ヴィオレッタが救われなかった要因の1つだろう。ヴィオレッタが化粧をして娼婦のような服装で学校へ通ったのも、母の教えの影響が強すぎたせいだし。家族間の問題を他者が介入して解決するのは、本当難しい。
ヴィオレッタの魅力
ヴィオレッタ役を演じた、アナマリア・ヴァルトロメイがとにかく魅力的でした。可愛くて美しい。本当に魅力的で、めちゃくちゃ可愛いんだけど視線が色っぽくてヴィオレッタの写真に魅力を感じる大人たちの気持ちもわからないでは無い・・・と思ってしまった。
だからと言って、行き過ぎた写真を撮っては良いわけではない。(´・ω・`)
一番最初に笑顔で母のカメラの前に立ってたヴィオレッタが、後で見返すと切ないです。あの時の顔のほうが、化粧もしてないのに大人びて見えました。なぜだろう。
実際はもっと酷いのだろうなという印象
映画では、だいぶマイルドに表現している印象がありました。DVDに収録された監督インタビューでも
ソフトにしてある
と言ってて、それは映画を見て伝わってきました。
実際にあったことをそのまま映画にしたら、ヴィオレッタを演じたアナマリア・ヴァルトロメイの負担も相当なものになるでしょうし、私はこの映画の内容でさえ、「アナマリア・ヴァルトロメイ大丈夫かな・・・」と心配しながら見ていました。
実際に自分が体験して辛かったことをそのまま役者に体験させない、監督の配慮は感じられました。
その他の感想
わかりにくい箇所がいくつかあった
ヴィオレッタと一緒に暮らすのは、祖母?曾祖母?というのが少しわかりづらく混乱しました。普通に見てると、アンナがおばあちゃんと言ってるので曾祖母だなーとわかったのですが、そうすると祖母はどこへ?と疑問に思い、「曾祖母じゃなくて祖母なのかな?」と考えてしまいました。
祖母はどうしていないんだろう?
シドとアップダイクがよくわからなかった
ヴィオレッタといちゃいちゃした写真を撮ったのが、シド・ヴィシャスだと思いませんでした。いや、シドから依頼があってイギリスに行くって言ってたけど、ああいう写真を撮るイメージが無くて(←シド・ヴィシャスのこと全然知らないくせに)
(´-`).。oO シド・ヴィシャスはいつ出てくるのかな?
なんて思いながら見てました。あと、アップダイクって、ジョン・アップダイクのこと???
ヴィオレッタへの学校でのいじめ
一人だけヴィオレッタのことを慰めてくれる友達がいたのは救いでした。いじめで、いじめる子をかばう子もいじめの対象になるという事象は本当に悪質。
最後の髪を短く切ったヴィオレッタ
別人過ぎて全然気づきませんでした。アンナがヴィオレッタと呼んで、とにかくびっくり。驚いてたらエンドロールでこの辺ちゃんと見てない(頭に入ってない)ので、もう一度見返したい。
終わりに
予告で見た内容を元にイメージしていた作品と実際の作品は微妙に違いました。それが少し肩透かしでもあったのですが、いろいろ見て考えるものがある作品だったのは違いありません。
一度見ただけでは理解しきれなかった部分や見逃した部分もあるので、もう一度見てみます。ただ、辛くやるせないシーンも多いので何度も見たい映画では無いですね。ヴィオレッタは魅力的でしたが。
▽ヴィオレッタを演じた、アナマリア・ヴァルトロメイのインタビュー